「食料の安全保障に関するアジア・太平洋会議」開かれる
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山浦康明
■2002年7月24、
25日香港において国際消費者機構(CI)と香港消費者協会の共催で、アジア・太平洋地域の消費者団体代表約百名が参加してこの会議が開かれ、
私も日本消費者連盟として参加しました。
会議の1日目は、CIの地域事務局長のソチ・ラチャガンさんが基調報告をしました。アジア・
太平洋諸国の消費者は3分の2が栄養不良状態にあること、多国籍アグリビジネスがアジアの農民に対して種子支配を行っていること、
多国籍の食品企業によって各国の消費者は食品の安全性問題に直面させられていることが指摘されました。
また2日目には、国連のFAOのアルゲンチさん、CIのアリスさんが、アジア太平洋の発展途上国に特有の問題として、「ストリート・フード」
(屋台など街頭での食品製造販売)の衛生上の問題も重要な課題である、と指摘しました。また、日本では人々が意識することも薄れた、電気、道路、
上下水道、などインフラの問題がアジア太平洋地域では農産物の流通の障害となっており、消費者の栄養不足問題は、
食料不足というよりも食料へのアクセスの問題であるとの報告もありました。食料の過剰摂取と栄養失調が共存しているこの状態を改善するために、
日本の消費者は何ができるだろうか、と考えさせられました。
また遺伝子組み換え食品はこれらの地域にも流入し始めており、消費者団体はこれに反対していますが、
一般の消費者はこの問題に気づいていません。政府の規制も甘く、GMの混入規制も日本と同様の5%です。今年0.5%
に強化されたEUとの関係の中でアジア太平洋地域にどっとGM食品が入ってくるのです。私も日本の食品安全行政の問題点を報告しましたが、
混入率を始め表示の厳格化、食品安全行政の確立など、日本と同様の多くの課題があることがわかりました。
表示の分科会では参加各国のコカコーラのかんのラベルの比較も行い、同一企業でも国によって異なる表示があることもわかりました。
今後参加団体の間で連携をとり消費者保護政策を進めさせようということになりました。
■会議では、さらに、
農業生産をめぐる問題提起がバングラデシュのバッタチャリャ博士、フィリピンのルーカスさんからなされました。アジアの小農にとって、
60年代の「緑の革命」は生産、農家経済、環境の各側面で失敗しました。農業の近代化に対して、伝統食など土着の知識体系を復活させること、
持続可能な農業を確立することの重要性が指摘されました。また、WTO農業交渉の中の「グリーン・ボックス」
(自由化交渉の例外規定として各国に認められるべき農業保護政策)の中に、01年ドーハ閣僚会議で出された「発展途上国ボックス」
を認めさせることも提案されました。これは農産物貿易の自由化に対抗して、農業生産の確保、貧農のための分配、小農のための技術的支援、
地域産物の振興をめざす政策であり、こうした事柄は自由化交渉の対象にすべきではない、というものです。
今後のWTO交渉においても農業保護予算の削減問題が一つのテーマとなりますが、
日本の農家や消費者にとって国内の農業保護は重要であることは共通理解できています。一方、
01年11月ドーハでのWTO閣僚会議において開始宣言が打ち出され、この中でも、「包括交渉」において、「輸出補助金の段階的撤廃」、
「貿易歪曲的な国内助成の削減」を目指すこと、「非貿易的関心事項の確認」、「開発途上国に対する特別待遇」などが採択されました。
02年12月に議長の概観ペーパーの呈示、03年3月のモダリティ(各国の関税削減などの目標基準)確立、
9月のメキシコでの第5回閣僚会議で各国の譲許表(交渉に対する約束)の提出へと進み、05年1月1日にWTO交渉の終結、
というスケジュールが組まれています。
日本の小農が置かれている状況は途上国の農民と同様のものがあるため、今後のWTO交渉において「発展途上国ボックス」
の考え方を広げて途上国と先進国の農業交渉の共通の提案とすることはできないか、と私も述べましたが、
先進国の農家と途上国の農家の土地所有の違い、経済力や保護予算額など、格差が余りにも大きく、
アジア太平洋の小農の連帯がすぐに可能となる状況ではないとの反論を受けました。しかし農産物の自由化の論議はアジア太平洋の農民にとっても、
日本の家族経営農家にとっても受け入れられるものではありません。これからはWTO体制の問題点をお互いに指摘しあい、
各国の状況をふまえた貿易ルールを提案しあうことが必要なのではないでしょうか。また、
同時に新潟の加茂有機米生産組合の石附徹太郎さんたちがすでにタイや中国の農民と実践されているように、草の根レベルで、
技術交流なども含めお互いを理解しあうことも必要でしょう。
日本の交渉提案において「農業の多面的機能の尊重」が強調され、農業のもつ環境保全機能や地域社会維持機能などが訴えられています。
ケアンズ諸国の農産物の自由化万能論に対して一定の歯止めとなりうる議論ですが、多くの発展途上国の賛同を得ているわけではありません。アジア・
太平洋諸国の状況を認識したうえで、農産物の各国の自給と貿易を行うさいのルールを考える必要があるのです。
(「消費者リポート」1198号に加筆)