2003年 遺伝子組み換え稲をめぐる動き
[ 2004年05月09日 レポートに戻る ]
遺伝子組み換えはいらない! 人々の声が伝わりはじめた
2002年秋、愛知県とモンサント社がすすめていた除草剤耐性イネ「祭り晴」は、消費者、生産者による全国的な反対運動で、
開発を進めないと愛知県が明言し、開発は中止されました。
2003年も、遺伝子組み換えイネの栽培実験、遺伝子組み換え大豆のデモンストレーション的な作付け、
遺伝子組み換えイネの新品種開発の大きなプレスリリースがありました。
しかし、市民、生産者の監視、反対の目は大きく育っています。
牧下圭貴 提携米ネットワーク事務局
●岩手県の栽培実験、来年以降中止へ
低温耐性イネ「ササニシキ」は岩手県の外郭団体である(財)岩手生物工学研究センターが開発中の品種です。
2003年に隔離ほ場栽培が認められ2年間に渡って隔離ほ場栽培試験を行うとしていました。
他のイネの遺伝子を導入することで低温耐性を高めたササニシキです。試験は、岩手県北上市の同センターにある屋外ほ場にて行われ、同センターは、
「低温耐性イネの開発は、2003年のような冷害に苦しむ岩手県稲作にとって必要だ」として商品化に向かう意欲を見せていました。
この動きに対し、岩手県の生産者が呼びかけて岩手遺伝子組換えイネ監視ネットワークを結成、監視と試験栽培中止を求める運動を広げました。
10月3日には同研究センターによって刈り取りが行われました。
11月28日、岩手県盛岡市で大きな反対集会が開かれ、全国から生産者、消費者が集まりました。そして、市内のデモ行進、
40万筆を超す署名を岩手県に提出するなどの行動を行いました。
岩手県は、この署名提出の際に、当初2年行う予定だった栽培実験を1年で終了させ、
今後一切遺伝子組み換えイネなどの野外栽培実験を行わないと明言しました。
これは、愛知県の栽培実験中止に続く、大きな市民の勝利です。
これにより、都道府県レベルでの遺伝子組み換えイネ開発は当面なくなりました。
●北海道、遺伝子組み換え野外栽培実験規制へ
酸性土壌耐性(トウモロコシ遺伝子導入C4)
イネ「キタアケ」は、2002年に隔離ほ場栽培、2003年に開放ほ場栽培が認められました。開発は、農業生物資源研究所・
農業環境技術研究所が中心になっており、2003年、北海道の農業技術研究機構北海道農業研究センターにて開放ほ場栽培が行われました。
主な用途は、酸性土壌に耐性を持つ品種の母種をつくることとされています。
この品種自体が来年以降すぐに食用として作付けされるとは考えにくいですが、「祭り晴」が中止された現在、
もっとも開発が進んでいる遺伝子組み換えイネとなっています。
この動きに対し、北海道遺伝子組み換えイネいらないネットが結成され、実験の中止と監視活動を行っています。このイネは、
10月16日に北海道農業研究センターにより刈り取りが行われました。
しかし、反対運動の高まりをうけ、北海道議会が12月10日に、遺伝子組み換え作物の商品化を行わないよう、国に求める意見書を採択しました。
さらに、北海道庁が、2004年1月に、北海道における遺伝子組換え作物の栽培に関するガイドライン骨子(案)を示しています。
それによると、基本的な考え方として、
・多くの道民が遺伝子組換え食品や開放系での遺伝子組換え作物の栽培について不安感を抱いており、全国の消費者も同様の意識
・遺伝子組換え作物の栽培は、花粉の飛散による交雑や混入による環境への影響などが懸念
・道産食品に対する風評被害や本道農業全体の著しいイメージダウンにつながる恐れがあるものと強い危倶
・特に、遺伝子組換え作物と一般作物等との交雑や混入を防止することが重要
・道としては、道内において開放系での栽培が行われることのないよう、強い姿勢で臨むことが必要
だと明言し、食に関する条例が北海道で成立するまでのガイドラインという位置づけで、北海道内での遺伝子組み換え作物の開放系野外実験、
商業栽培などを認めないという厳しい内容になっています。
さらに、農林水産省が示している、独立行政法人などの研究機関が試験栽培する際のガイドラインについても、
パブリックコメントに対する意見を提出し、研究機関だけでなく、すべての野外栽培について対象にすべきであり、
交雑防止のための隔離距離も厳密に広くとるべきで、周辺住民同意の必要性などを訴えています。
日本の中でも大きな生産地を抱える北海道庁がこのような姿勢をとることに、多くの市民は共感を覚えており、
この姿勢を持続するよう支援することにしています。
●組み換え大豆のデモ栽培は、産地からの反発を生む
2002年に引き続き、バイオ作物懇話会は、茨城県谷和原村、滋賀県中主町、岐阜県瑞穂市の3カ所での作付けを行いました。
2003年は結実までを想定しており、組み換えた遺伝子の拡散が心配されました。
茨城県谷和原村では、作付けした生産者およびバイオ作物懇話会に対し、市民団体や周辺生産者が交渉を行い、
花粉の飛散防止策をとるところまで合意がされたものの、すでに花粉は飛んでおり、飛散防止策がとれなかったため、
第三者が大豆を畑に埋め込む直接行動を取りました。
その後、谷和原村議会は、12月18日に、遺伝子組み換え作物の栽培禁止を求める意見書を採択し、国に提出しました。
滋賀県中主町では、茨城県谷和原村での埋め込みを受けたバイオ作物懇話会が、その直後に作付けしたもので、
農水省を通じて市民団体がその情報を確認し、滋賀県や地元の農協が地主に対してすき混みを要請、畑に埋め込まれました。その後、滋賀県は、
県内に遺伝子組み換え作物が作付けされないようガイドラインを作成する方針を打ち出しました。
岐阜県瑞穂市の畑については、市民団体の要請を受けて、生産者が畑に水を入れて腐らせました。
このように、バイオ作物懇話会が作付けを行った自治体や生産者、JAなどは、遺伝子組み換えに
対しての警戒を強めるという結果になっています。
このように、2003年は、生産者、市民が抱く遺伝子組み換え作物の身体や環境への影響を懸念する声が、具体的な行動に結びつき、 地方自治体も積極的に動くようになりました。今後も、このような動きを拡大させていく必要があります。
■開発はまだ続いている
2004年は、農水省外郭の独立行政法人農業生物資源研究所が中心となって、遺伝子組み換えイネの品種開発を行っており、
その内容を開発企業などと共同でプレスリリースすることで、注目を集めようとする動きを見せています。
糖尿病治療や花粉症予防のような品種を発表することで、遺伝子組み換え技術が有用であるような見せ方を試みています。
●糖尿病治療イネ
三和化学研究所、日本製紙、農業生物資源研究所は、2003年5月12日、同日付でそれぞれプレスリリースを行い、
インスリン分泌をうながすペプチド薬成分を含むイネを遺伝子組み換えにより開発し、
ご飯を食べながら糖尿病治療に役立つとして商品化の意欲を示しました。
商用化されても、医師の指導のもとで供給されることとしています。生活習慣病である2型の糖尿病に対するものであり、
その意味を疑問視する報道も行われています。
報道では、早ければ2006年にも商品化する計画、世界で1号の商品化となる可能性もあるとしています。
●花粉症予防イネ
農業生物資源研究所が力を入れているもうひとつの品種が、花粉症予防イネで、同所のホームページでは特設ページを解説して、
本技術が有効であると強調しています。
これは、スギ花粉症の原因となるタンパク質のうちの1種類をイネに組み込み、このタンパク質を生むイネを開発したもので、
コメをマウスに食べさせ、減感作療法と同様にアレルギーの発症抑制を起こし、加熱しても効果が落ちないとものだとしています。
これに対し、厚生労働省は、組み込んだ遺伝子がすでに知られているアレルギー原因物質の遺伝子と同様のものであるならば、
食品としては認められないとの立場を示しています。
農業生物資源研究所は、2004年には野外隔離ほ場で栽培したいとしています。
●耐病性イネ
2003年12月22日、
農業生物資源研究所と中央農業総合研究センターがプレスリリースした品種です。カラシナ由来の抗菌蛋白質ディフェンシン遺伝子を導入し、
選択マーカーにイネ由来の除草剤耐性の遺伝子を導入した品種を開発。さらに、北陸研究センターが開発した、イネの「可食部」
で組み換え遺伝子が発現しないようなスイッチとなるプロモーターを導入し、緑色部分のみで発現するものであるとしています。
■2004年、LLライスと組み換え小麦
2004年にもっとも警戒すべきは、
アメリカでのLLライス作付けと遺伝子組み換え小麦の栽培認可動向でしょう。飼料用の除草剤耐性LLライス(リバティリンクライス)は、
すでに日本での輸入認可を受けており、アメリカで作付けされれば、日本に輸入される可能性の高い飼料用イネです。現在は、
アベンティスクロップサイエンス社から、バイエルクロップサイエンス社に移行しています。
もうひとつ、モンサント社の除草剤耐性小麦の動向にも注意が必要です。
アメリカとカナダで栽培に向けた申請準備がすすめられているとのことですが、カナダでは、カナダ政府が乗り気ではなく、
申請作業が遅れるだろうとの報道がされています。アメリカでの申請を通さないように運動を展開する必要があります。
国内では、やはり、バイオ作物懇話会が2004年も作付け実験を行う姿勢をみせており、注意が必要です。また、
農業生物資源研究所が開発するいくつかの遺伝子組み換えイネについて、野外実験を行わせないよう監視活動が必要です。