適正農業規範(GAP)と農業環境規範
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適正農業規範(GAP) と農業環境規範
提携米ネットワーク事務局 牧下圭貴(提携米通信05年6月号より)
■農業環境規範とはなにか?
「農業環境規範」とは、正式名称「環境と調和のとれた農業生産活動規範」の略称です。
平成16年度(2005年3月31日)に策定され、農林水産省生産局より通知されたもので、新しい「食料・農業・農村基本計画」にも
「環境問題に対する国民の関心が高まる中で、我が国農業生産全体の在り方を環境保全を重視したものに転換することを推進」するとの考え方の下、
「農業者が環境保全に向けて最低限取り組むべき規範を策定し、平成17年度より可能なものから、
その規範を実践する農業者に対して各種支援策を講じていくこととする(クロス・コンプライアンス)」と位置づけられています。
作物生産分野では、
土作りの励行 適切で効果的・効率的な施肥
効果的・効率的で適正な防除 廃棄物の適正な処理・利用
エネルギーの節減 新たな知見・情報の収集
生産情報の保存
の項目について、生産者が自ら「点検」し、点検シートにチェックを入れていきます。
農林水産省が作成した点検シートや規範、点検要領のマニュアルがあります。
この農業環境規範と点検シートは、都道府県等が別途同等以上のものを作成しても構いません。
農水省は、補助金、交付金、資金、制度など事業関係については、この「農業環境規範」を実践する農業者に行うことで、
推進していくことにしています。そこで、これら事業等を受ける生産者は、点検シートの写しを手続き窓口に提出することを求めています。
農水省が作成した農業環境規範は、法令遵守などきわめて当然であたりまえのことであり、
環境保全のための積極的な導入策というほどのものではありません。
しかし、農薬・化学肥料等の積極的使用から、適切な使用の推進や環境保全を意識することを求めるなど、従来よりも一歩進めた表現もあり、
慣行栽培の生産者に環境保全や農薬・化学肥料等の適正な使用を意識させる点においては評価できる取り組みです。
農水省が認めているとおり、これは「最低限の規範」であり、望ましい方向である有機農業等について、農水省が技術的な裏付けや研究、
情報提供を行っていくことも必要です。
農水省 「環境と調和のとれた農業生産活動規範(農業環境規範)」の公表について
■GAPとはなにか?
GAP(適正農業規範)は、英語の Good Agricultural Practice の略称です。その名の通り、
農業生産における行動を規定するもので、「衛生管理」「環境負荷低減」「食品安全」など目的を明確にしてつくられます。
今回、2005年3月に決定された新しい「食料・農業・農村基本計画」に位置づけられたGAPは、
「食品安全のためのGAP」(以下、食品安全GAP)です。
食品安全GAPは、農林水産省の消費・安全局が窓口となり、「食品安全のためのGAP」の策定・普及マニュアル(初版)が発表されました。
この食品安全GAPの目的は、消費者の安全のため作物の生産から消費までの適切なリスク管理を行うためのものということです。
農水省によれば、マニュアルをもとにして、地域や作物の状況に応じてそれぞれの食品安全GAPを作成し、
それに沿った作物生産を行うことを求めています。
このマニュアルの米の部分を見てみると、
適用の範囲を、生産段階(播種から収穫)、乾燥調製、貯蔵、出荷までで、食品危害要因(リスク)を、
かび毒 残留農薬 異種穀類 異物(石、ガラス片、金属片、プラスチック片など)カドミウム
としています。
そして、別紙のようなチェックリストを例示しています。
■農業環境規範とGAP(適正農業規範)
の関係
農業環境規範とGAP(適正農業規範)の関係について、GAPマニュアルでは、
農林水産省では、環境と調和のとれた農業生産活動を推進するため、
作物の生産に取り組むすべての農業者が着実に実行すべき農業環境規範を定め、平成17年度以降、
事業等への関連付けを通じてその普及を図ることとしています。この農業環境規範は、
農業者が環境保全について最低限取り組むべき規範として策定されたものですが、その中には「効果的、効率的で適正な防除 「生産情報の保存」
のように食品安全GAPと共通する内容も含まれています。したがって、今後、産地における食品安全GAPの導入、策定を行う際には、
農業環境規範に含まれる内容も盛り込んで一体的に取り組むことが重要です。
としています。
■よくわからないが大変??
食品安全GAPマニュアルによると、
EUの食品事業者等で構成するEUREP(欧州小売業組合)が進めているEurepGAPにおいては、「食品安全」のほかに、「環境負荷低減」
や「労働福祉」を目標・理念として掲げています。
としています。
今回もっともわかりにくいのがこの点です。環境負荷低減として、農業環境規範を示し、それを補助金等の要件にしつつ、一方で、
食品安全GAPを策定して、それを推進しようとしていますが、どちらも新しい「食料・農業・農村基本計画」に位置づけられており、
食品安全GAPマニュアルにも「一体的に取り組むことが重要」としています。
しかし、それらは、「生産局」と「消費・安全局」のたてわりのままに別のスケジュール、別の考え方で作成され、発表されました。
対象はどちらも生産者であり、また、内容をみれば、JAS有機や特別栽培農産物の記帳、認証等に比べて低いレベルのものであり、
明らかに一般慣行のすべての生産者を対象にしたものとなっています。
わざわざふたつにわけることで、わかりにくく、とっつきにくくなっていることは明かです。
現状、JAS法有機農産物、特別栽培農産物という生産物につけられる栽培方法に応じた基準があります。また、
導入が予定されている情報公開JAS、あるいはトレーサビリティJASも畜産から農産物全体を対象に考えられています。このほかにも、
エコファーマー制度など生産者を対象にした制度もあります。
環境負荷の低減=環境保全と食品安全が重要なのは分かりますが、農業政策、
食料生産政策をどのようにとらえるのかが不明瞭なままにさまざまな手続きばかりを生産者に増やしているような感じがあり、
実効性を含めて疑問です。
農業政策全体の方針や考え方からこれら環境保全、食品安全に関する制度の整理をしていく必要があります。
別紙チェックリスト(クリックで拡大)